創作過程

私達が工房を構える新潟県糸魚川市柵口地区は豊かな自然に囲まれています。

チェーンソーを担いで山に入り、木を伐り、丸太にして工房にて3,4年寝かせます。丸太を斧で割り、製材して厚みを合わせて板にします。


自然界には様々な色合い、木目の木があります。

同じ木でも部位によって色合い、木目の変化が多様です。

 


木を眺め、木と対話し、イメージを膨らませます。

木の木目、模様、色を通し、だんだん浮き上がってくる景色が見えてきます。

一枚の木の板が空になり、大地になります。


 

最初から完成イメージがあるわけではありません。

少しづつ浮き上がってくる景色に合わせた木々を嵌め込みながら、木とその都度相談しながら創作していくため、作っている制作者自身もどんな作品に仕上がるのか分かりません。そして、時に最後のパーツを嵌め込み、できあがった作品を見た時自分の能力の2倍3倍以上の完成度に鳥肌が立つことがあります。まさに木の力、自然の素晴らしさを実感する瞬間です。

 


では、切り出しスタートです。

まず嵌め込みたい木のパーツや背景を電動糸鋸で切ります。

かなりの集中力、高い技術が必要となります。

球体、1ミリ以下の鳥の足などとても難易度が高いです。

 

 


別の木を切り抜いた箇所に隙間なくピッタリはめ込みます。

独学ゆえに技術的なことも手探りで習得しました。

色々な技も生み出しました。


全て嵌め込んだら次はスライスします。

約1ヶ月かけて一つの作品を作りあげるため、1点ものとして販売するなら本来であれば数十万はくだらないとても高価なものに。しかし、その一つの作品をこのようにカンナで薄くスライスをすることが可能なのです。(例えで言うと金太郎飴のように・・・)。そして、むしろ、薄くスライスしたものを強度の強い薄い木の板に綺麗に貼ることによって長期にわたって質の落ちない美しい状態を保つ(そったり、割れたり、隙間ができない)作品となります。一つの作品につき約10〜15枚スライスしてるため、それにより比較的安価な値段での提供が可能となっています。しかし、この技術を習得するのにかなりの年月を費やし、計り知れない手間暇がかかっています。

 

 


 

こちらのカンナでスライスします。

カンナの刃を少しづつ調整しながら試しずりを繰り返す。

嵌め込んだ木たちの厚さがそれぞれ異なるため全ての木が同じ厚さになるまで繰り返し、木の木目の流れをよみ、それに合わせた刃の向きや厚さで繊細な微調整を行います。木は生き物であり同じものは一つもないためいつも綺麗にスライスできるとは限りません。何度もトライアンドエラーを繰り返しながら慎重に木と相談しながらスライスしていきます。


木の板に綺麗に貼り合わせる。この作業も本当に難しく長年やっている今でもとても気を遣う作業です。貼り合わせる時にゆがんでしまったり、シワができてしまうことがよくあり、全てがここで台無しになることも。

天気、湿度、温度を見ながら慎重に丁寧に行います。

 


 

 ここまでいったら額作りです。実は額も全て制作しています。額作りにもかなり手間暇がかかるため多くの時間を費やします。お客様から額のクオリティの高さにも注目していただくことが多く、額を特注で作ってもらえないかと聞かれることもよくあるほどです。申し訳ないですがそこまでの余裕はなく、「額屋さん」でもないので丁寧にお断りさせていただいております^^;

 


 マット紙やアクリル板も全て自分たちでカットし額装して、化粧箱も一つ一つ作品に合わせて丁寧に作り、最後にサインを入れて箱に入れて完成です。



木象嵌の作り方 イラスト解説

挽き上げ式と垂直挽きの2通りで創作しています。


※木象嵌作家「こばみつ亭」さんの図解を参考に制作しました。(許可済)


垂直挽き

 嵌められる木と嵌め込む木を別々に切りピッタリ嵌め込む。

鳥のクチバシや足、花の茎など尖った図柄や細い図柄は垂直挽きでないと綺麗にできません。

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